「また冬が来て〜IZO2~」と「龍馬よ雲になりすませ」の2作品の間に実は半年の空白がある。
既に長州藩が京都から追われ、土佐勤王党壊滅の危機となっていた1年である。
作品的には「壬生で見た月〜新選組誠剣伝〜」の時代である。
幕臣勝海舟の庇護の元、召喚指令を無視してまたしても龍馬は脱藩する事になった。
今はただ待つときであると自分に言い聞かせる。
勝は龍馬らが、同志の敵討ちなど血気に走らぬように、長崎への出張に随行させる。
だが、事はそんなに簡単ではなかった。
長崎から戻るなり、既に京都では長州の巻き返しがあると噂が立ち上っていたのだ。
望月亀弥太と、北添佶馬が海軍塾を抜け出した。
龍馬はすぐに追う。
土佐では、武市が投獄されたとの知らせが入っている。
武市を釈放するにはもう一度尊皇攘夷派の勢いを増さねばならない。
長崎でであった横井小楠も謹慎されていたのだ。
土佐勤王党員であった2人が血気にはやるのは目に見えていた。
これはいかんちや、いかんちや。
もう誰も死ぬんを見たくない。どうしたらええ、どうしたらええ。
「龍馬さん、アシらは血気にはやったことなどしよりません」
「なんち、いいゆう。今の京では何があるかもわからんきに」
「長州は密かに銃、弾薬を集めちょるそうですき」
「ほうじゃ、そうれがどうしたんじゃ」
「どんな計画なのかアシは知りたいんじゃ」
「ほじゃき・・・」
「無謀なら、亀と止めますき」
「じゃが・・・」
「江戸に行くんじゃろ。龍馬さんこそ、京におったら危ないぜよ」
龍馬は不安を残したまま江戸に向かう。
そしてその不安は的中する事になるのだ。
池田屋事件。
桂小五郎は難を逃れたというが、吉田稔麿、宮部鼎蔵ら、名の透る志士がきられたという。
そして、土佐の望月も北添も、斬られたのだ。
いかん!!
龍馬は急ぎ、江戸から神戸に戻る。
不穏な計画は確かにあった。
だが、実行するのかどうかもわからない計画だったはずだ。
何の意味もなく、ただ、斬り込んで、ここまでの大量の死は火をつけることになる。
海軍塾内が沸騰するのは目に見えている。
いや、海軍塾が沸騰するということは、長州や、他の志士はどうなる?
そして、攘夷志士であれば斬り殺してもいいという風潮は武市にも影響する。
以蔵・・・?
以蔵はどこにいったんじゃ?
京都の街におったはずじゃ。
いけん、池田屋におったかもしれん。
あん男はどこぞに消えよった。
いけん・・・。
「勝先生、蝦夷を開拓しよりませんか?」
「・・・蝦夷?お前さん、江戸から帰るなり急に何を言ってるんだい?」
「蝦夷に攘夷志士を送り込んで開発させるがです。」
「ほぉ」
「誰も彼も血気にはやっちょる。これ以上有望な者が死んでも国のためにはならん」
「するってえと、開発と、志士たちを守る一石二鳥かい?」
「そうですき」
「いいだろう、かけあってみるよ」
「罪人も・・・以蔵が捕まったら、送り込むようにすればええがです。遠島のようなもんじゃ」
「わかった、わかった。かけあってみるさ」
だが龍馬のこの発案は総状まで行って頓挫する事になる。
予想以上に池田屋事件への怒りが大きかったのだ。
長州から軍勢が京都に上がってきた。
多くの他藩の志士が合流し始めている。
この海軍塾からも合流するべきだと、叫ぶものが出てきている日だった。
・・・姉、乙女から手紙がきたのだ。
・・・武市の投獄と・・・以蔵が護送されてきたと書かれていたのだ。
武市先生は投獄されよった。富子さんは毎日、板の間で寝ちょる。
一刻も早く助けてあげたいと思うちょる。
捕まった同志がこれまでの活動を口にすることはないじゃろ。
じゃけんど、今は何が起きるかワカランキニ。
以蔵が・・以蔵が土佐に護送されてきよった。
勤王党の同士はそれぞれ、襟の裏に自決用の毒をしこんじょるが以蔵には渡す暇もなかった。
毎日、獄舎からは、泣き声が聞こえよる。
望月のこと、北添のこと、もう土佐まで聞こえちょる。
お乙女姉さんもないちょる。
吉村、那須、安岡、望月、北添・・・あと何人死ぬんじゃ・・・。
大和天誅組で死んだ思うた、池内蔵太も、生還したのにまた長州の軍勢と合流しちょる。
もう、誰も、一人も死んで欲しゅうないがじゃ。
どうしたら、ええんじゃ。
どうしたら、アシは皆を救えるんじゃ。
なんもでけん。なんもでけん。
練習船の舳先で、龍馬は海を見ながら泣いていた。
同志が憤り、涙を流しても龍馬はいつも笑っている。
一人になった時だけ、海に向かって泣く。
北添や望月の笑顔が頭の中に浮かんでは消える。
「この船はどこに行くんじゃ?」
2人ともっとも仲の良かった安岡の厳しい声が龍馬の背中に突き立った。
坂本龍馬の命、あと3年・・・
2008年02月20日
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