2007年12月12日

太平の眠りを覚ます上喜撰

太平の眠りを覚ます上喜撰 たった四杯で夜も眠れず



ドン、ドン、ドン。
空を叩く音。
まだ眠いよ。
まだ起きたくないよ。
ドン、ドン、ドン。
・・・目覚めろ。目覚めろ。


龍馬が何よりも驚いたのは北辰一刀流が理合を非常にわかりやすく説明する事だった。
剣の道となると、何かと精神修行や、気合や根性など、心の問題が大きくなる。
その点、北辰一刀流は非常に合理的に剣を教えてくれる。
多くの門人を抱える理由がここにあるのだと龍馬は思った。
西国はまだ少なかったが自分のような地方出身者も多かった。
理を教えているから、また、若い門人も強かった。

特に多いのは水戸藩の藩士だった。
水戸の殿様は近年の外国船問題などに非常に開明的で、海岸警備などを早くからしている。
また、水戸学と呼ばれる水戸黄門から始まった日本外史が盛んで、勤王藩などと呼ばれていた。
当然、武術の奨励が活発で、砲術や剣術に至るまで藩士たちは学びに来ていた。
土佐の山内容堂公よりもずっと早くから開明的だった。

男同士が集まると、当然のように女の話になる。
年上の連中は、女郎屋に出入りもしているようで、若い後輩に色々と教える。
わざわざ剣を学びに来ている藩士は自由になる金も少なく、涎を出すだけである。
桶町の道場ではやはり、千葉佐那はアイドル的な存在だった。
もうすぐ、恋人が出来るぐらいの年齢。
とは言え、師匠の娘ともなれば、夜這いなども出来ない高嶺の花。
剣も強いが、何よりも美しかった。
誰もが、佐那に何か興味を持ってもらえるような事をしたがった。
龍馬は笑って聞き流した。

江戸についてまだ2ヶ月。ようやく道場にも慣れた頃だった。
いつものように、汗を流していただけだった。

ドン、ドン、ドン。

空から地響きのような音がした。
花火の音にも似ている。
まるで、空から誰かが、足踏みをしているような錯覚。

品川沖に現れた四隻の黒船の礼砲の音だった。
鉄の船がアメリカからやってきた。
300年の長きに渡る鎖国政策をとってきた日本の首都というべき江戸に。
直接、蒸気船が乗り込んできた。

すぐに土佐藩邸に命じられ龍馬は品川の警備をする事になる。
江戸中の侍が、品川沖に駆けつける。
その日、古道具屋から鎧が一斉になくなったという。
寺の鐘を並べて、大砲に見せかける藩まであったという。

龍馬ははからずも歴史の変わり目に江戸にいた。

・・・そしてその日、日本の草莽の志士たちが目覚める事となった。
posted by 前方公演墳 at 04:26| 東京 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 龍馬伝説
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